彼の指定席


レジ横に置いているメニューブックを両手で抱え、入り口のドアでスタンバイ。


彼は少し息を切らせながら、店の中に入ってきた。



「いらっしゃいませ。どうぞ」



余裕たっぷりに笑うあたし。


だけど、声はほんの少し震えている。

胸がドキドキして。

手に持っているメニューブックを、今にも落としそうなくらい緊張しているんだ。



こうやって出迎える従業員に対して。

彼はいつもはにかんだ様な笑顔を見せる。


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