彼の指定席
増永さんはひどく驚いた顔であたしを見た。
そんなに見ないでよ。
下げてきたお皿、落として割っちゃいそう……。
緊張して、震える手。
あたしと増永さんの間に流れる空気。
「……あたし、ずっと好きだったんです。増永さんのこと」
いま、この場が、ランチタイムで賑やかになっていることに、ほんの少しだけ感謝。
もしもここが、静かな場所だったら。
あたしは、こんなにさらりと想いを告げることなんてできなかったかも。