しづき
「無視ですか?」
「……」
「…嫌いになっちゃいますよ?」
そう言えば、ぴくりと反応する大きな手。
今度はぎゅっと握られて
それでも痛いわけじゃなくて
「………やだ」
私を見つめるのはとても哀しげな目。
もう、ジト目なんかじゃなかった。
ツキンと胸が痛むくらい揺れていた。
「……しづき」
自分で白の弱点を突いておいて、言葉の詰まる愚かな私。
そんな私の名を呼んだ白は、綺麗な顔を寄せて、喉元へ唇を押しつけてくる。
「…ん」
漏れた声は白のもの。
キスとは違う。
はむって食べるような動き。
何回か繰り返されれば最後にチクリと痛みが走り、舌先で円をかくように舐められる。
「汐月は…ぼくのこと嫌いになっちゃだめ」
「……」
「だめ、ほんと、ごめん。死にたくなる」
白はうつむいてソファの背に体をあずけた。
私の好みすら支配してくるその男は、目が合えば哀しげに笑う。