しづき


「じゃーいくね、しりとり」


「またはじめからですか」


「ぼくは秩序を大事にする派なの」



ほら、と目で催促される。



誘拐犯に秩序なんて概念があるとは…



「り…リズム」


「むし。あ、虫のほーね。無視よりぜんぜんマシ」



いったいなんの主張なのか分からない。



「…しお」


「おゆ」



おゆ、お湯…ゆ、ゆ…



ゆってあんまり思いつかないかも…。



「うーん…指輪?」



どうにか絞り出すと、白が「え」と声をあげた。



「汐月すご…。奇跡起きたね」


「???」



もしやバカにされている?
"ゆ"から始まる言葉を思いついたことがそんなに奇跡と?



目をぱちくりさせていると、白がいつのまにかどこからか小さな箱を取り出していた。



「じゃーん」



喜色満面。
私は一瞬で理解した。


< 106 / 312 >

この作品をシェア

pagetop