しづき
パカリ
箱が開かれれば、中には2つの指輪。
「1年前から温めておいたペアリング」
い、1年前…。重い、めちゃくちゃ重い。
「いつ渡そうか考えてたんだけど、まさか汐月から言ってくれるなんてね」
「いやべつにそういうわけじゃ…」
「ナイスタイミングだよ。ほら左手出して」
出してというくせに、待ちきれないのか自分の手ですくいとってくる。
嵌められるのはもちろん薬指。
するりと親指で触れられた瞬間、ある記憶がよみがえってきた。
──『好きだ…汐月』
低い、大好きで、大っ嫌いな、声。
「…いやっ!」
パシンと音を立ててその手を振り払った。
すぐそばの白が、別の人間としての輪郭を描き出して、全身に嫌悪感が走る。
「汐月…どーしたの?」
驚いたように私を見る白。
その顔はやっぱり綺麗で、紛れもない白で。