しづき
「私…」
「うん?」
「恋人がいたんです」
「あー、あいつね。あのチャラそーな男」
当たり前のように知っている白。
本来ならゾッとする場面なはずだけど、石けんの匂いと優しく頭を撫でる手つきに思考ごと溶かされていくようで…
「その人に貰ったことがあるんです…
ペアリング」
「…うん」
「貰った時期が時期で。いわゆる倦怠期に貰ったんです。すごく嬉しくて…まだ私のこと好きでいてくれているんだって浮かれていたんです」
彼はいじめられていた私に唯一優しくしてくれた人。
チャラチャラしているように見えても、それは見た目だけで。
中身はとても誠実。
悩みはいくらでも聞いてくれたし、辛い時には笑わせてくれた。
彼がいたから頑張れた。
『好きだ…汐月』
真剣な表情でそう言われた時は、どれだけ嬉しかっただろう。
私は彼のことが大好きだった。