しづき






白に監禁されてどれだけ経ったのか。



時計もテレビもスマホもない世界。
感覚などとっくに失っていた。



起床して、着替えて
なんとなくベッドから離れたくないと思った。



「やっぱりいいにおい…」



心地よい石けんの匂いに目を閉じる。
そしてまぶたを上げれば、とっくに見慣れた私一面の壁。



恐ろしいのが、見るたび写真が増えていっていること。



「あの人…どれだけ私のことが好きなんだろう」



ふと目に入ったのは、桜色のワンピース。



かわいらしいデザインには似つかわしくない自傷痕だらけの体。



そしてあの人から刻まれたいくつものしるし。



これを見ると、現時点で私は白のものなのだといやでも思い知らされる。


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