しづき


「──よし」



立ち上がる私。



たまには私から顔を出してあげるのも悪くないかもしれない。



いつものお礼…というか。



私が顔を見せることで、白が嫌な気分になるわけないから。



なんて、必死な強がりを胸で唱えながら部屋を出る。



白はいつもリビングのソファで寝ていると言っていた。



いつもの如く、しっかりと閉鎖された玄関の扉が目に入り、すぐに逸らす。



あまり見たいものではないから。



「……おはようございます」



静かにリビングへと入れば、中は異様なまでにシンとしていた。



毎日当たり前のように溢れている
「生活感」というものが微塵も感じられない雰囲気。



この家にひとりぼっちになったような気分になる。


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