しづき
「よかった…」
こぼれる言葉。
安堵感に包まれていく。
まるで迷子になった子どもが母親を見つけた時のよう。
「白」
「……」
「白ってば」
「……」
返ってくるのは規則正しい寝息のみ。
いつもの甘ったるい声を聞かせてくれることはなかった。
「白、起きて」
私からは握ったことのない、大きな手を握る。
──キュ
軽く握り返される指先。
それは私への執着心か、ただの反射か。
分からないけど、その指先が今だけはどうしても愛おしかった。