しづき
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その夜、お風呂からあがった私は、いまだ目を覚まさない白のもとへ行く。
いつか掛けたブランケットに包まれながら、白はあいかわらず可愛らしい寝顔をしていた。
「白…」
ここ最近、白の名前を呼ぶこと以外に言葉を発したことがあっただろうか。
食べるものは私の好物がめいっぱい備蓄してあったし、電気が止まることはないから暗闇で過ごす夜はない。
なにも不自由のない生活。
全部白が用意してくれたもの。
だけど、それなのに、私の心にはぽっかりと穴が空いたようだった。
素直に言えば「寂しい」のだと思う。
ひとりぼっちだった私に、無理やり無償の愛を与えてきた人が、こうして動きもしないんだから。
…名前すら呼んでくれないんだから。
「…白」
そっと、彼の左の鎖骨に触れる。
私の名前が入った白い肌。
私と白を繋ぐ、唯一のもの。