しづき


「1ヶ月経ってまた寂しい独り身に戻ったら再就職でもするんですか」


「独り身とか悲しーこと言わないの。そーだね…汐月を元の場所に帰したら、ぼくはあの街から離れるよ」


「え、」



おもわずその顔を見た。



「ん?なーに?」


「いや」


「ふふ、驚かないで。ぼくもどっかで心を休めよーかなって。叶わない人を想い続けるのってけっこー大変なんだよ?」


「……」


「ぼくは汐月の幸せを願いながら隠居でもするよ。汐月以外の女性はもう好きになれそーにないからね」



白はそこで言葉を切ると、スピーカーから流れる曲の最後のサビを口ずさみはじめた。



私の好きな、いちばん好きな曲。



白は歌声も綺麗だった。


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