しづき


「その声も、火照った顔も…ぼく以外の前で見せてほしくないな。ぼくだけが知っていればそれでいーのに。汐月はぼくのものなのに…」


「んっ…はぁ」


「やっぱ首輪じゃ足りない。
ぼくの心が満たされないよ」



見下ろされる。



妖艶で熱っぽくて



目の前の私以外、なにも存在していないような世界を生きる、濁った瞳。





「汐月のこと縛りたい。
どこにも行けないよーに、完全に。
ぼくのことしか考えられない空間に」





突然の浮遊感。



横抱きにされた。



全身が凍りつく。



ここで抵抗しなければ、もう最後だと思った。




「白…待ってくだ」

「もーさんざん待ったよ」




低い低い声。



いつもの甘い白ならきっと、仕方ないなっておろしてくれる。



だけど、今の白は別人だ。


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