しづき


「ぼくは汐月を傷つけたくない。
味わってきた孤独も、植え付けられたトラウマも、全部ぼくが塗り替えてあげたい」


「…白……」


「そう思って、ひたすら汐月に尽くしてきた。誰よりも愛してるから」




リビングを出て、向かう先は、ここに来てはじめて目にする場所。



薄暗い奥まった場所に位置する扉を開けば、下へと続く階段があった。



これは…地下?



「白…こわい…」



ぽろりとこぼれた言葉。
白の服をぎゅっと握る。



それでも





「ごめん、もう逃がしてあげられない」





白は、ゆっくりと階段を降りはじめた。




< 201 / 312 >

この作品をシェア

pagetop