しづき
「…幻滅した?
こんなところに連れてきて」
「……」
「下手だなぁ…ぼく。
ようやく信頼してもらえたのに、すぐ汐月に迷惑かけて。心を閉ざされる」
はぁぁと大きめの息をついてなお、私へのまなざしはあいかわらず優しい。
「ここへ連れてくるのは、汐月がぼくのことを大丈夫だと思ってくれてからって決めてたんだ」
「……」
「必要最低限のものしかないこの部屋でひたすら愛し合いたかった。…それだけ」
白はどこか遠くを見た。
何度も切望したのであろう。
こうでもしないと叶わなかった2人だけの世界。
そしていつものごとく私の心情なんかを想像して、ひとりで切なくなっているんだろう。
どうしてこんなにずるいのか。
この男は私の消え去った感情をいとも簡単に呼び起こしてしまう。
「……今までの」
「うん?」
「今までの優しさは…偽りですか?」
交わった瞳。
白はすぐにその首を横に振った。