しづき
「───い、おい」
なにか…声が聞こえる。
おぼろげな意識の中、重たいまぶたを開く。
目の前に──人がいた。
「ん……しろ?」
帰ってきたのかな?
私、いつのまにか寝ちゃったんだ。
なんて、呆れるくらい冷静な脳みそに
再び声が降ってくる。
「ふっ…しろってアイツのことか?
気色わりぃ。早く起きろ」
気色悪い?
白はそんなこと言わない。
私の知っている白よりもずっと声が低いということに気づき、冷や水をかけられたように意識が覚醒した。
消したはずの灯りがついている。
そこに浮かび上がるのは…黒髪。
──知らない男の顔だった。
「だ、だれ?!」
勢いよく跳ね起きる。