しづき
「いいか、俺はお前の味方だ。汐月」
その言葉は、私を混乱させるのには十分だった。
味方…?どういうこと?
どうして私の名前を知っているの?
自分でもわかるほど目を見開いていれば、そんな私に男は口もとをほころばせる。
優しい表情。
私はそのまなざしを知ってる。
白に教えてもらった。
愛おしさを感じている時に、白はいつもこんな顔をしていた。
男は私を「愛おしい」と思っている…?
わからない。その理由がどこにもないから。
「おい、まだあいつのこと考えてんのか?
俺のことだけ見ろ」
「んっ、ぁ」
グッと口内の指を押される。
漏れた声に男は「いい声だな」と笑った。
「お前、覚えてるか?
グラサンした胡散臭せぇ男のこと」
男の言葉に、ある人物が浮かんでくる。
白とデパートに行って、あるアクセサリー店に入った際、白と私に絡んできた男。
どうやら白と昔馴染みらしく、私の存在もなぜか知っていた。