しづき



「俺、そいつの弟」


「んぐ?!」



衝撃の告白に、おもわず口に突っ込まれている指を噛んでしまった。



しまったと思えば、一瞬だけ顔をしかめた男。



「ってぇな…このおてんば娘。
まァいいや。汐月からの痛みならご褒美ってもんか」



そう言うと、男はもっと噛めとでもいうふうに自身の指を歯に押し当ててきた。



なんなの…この人…?



「お前、今あいつに監禁されてんだろ?
あいつの素性とか、そーいうの聞いてるか?」



私はううんと首を横に振る。



素性なんて…白は驚くほど自身のことを教えてくれない。



というか、そもそも白が覚えていない。



「ははっ、だよなぁ?
なんも知らねぇやつにこんな足枷なんか付けられて…可哀想に」



男はそっと、私の足に触れた。



乱暴な言動からは想像し難いほどやわらかな手つきだった。



「俺、兄さんからいろいろ聞いてんだ。
汐月とあいつのこと。だから、助けに来た」


「え?!」


「じつはひとつだけ、ここから出られる場所を知ってる。今だってそこから入ってきた。そんで、こんなモンも持ってる」



シャランと音がして
男の指には小さな鍵がぶら下がっていた。





「この足枷の、鍵」


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