しづき


「ぼくには時間がない…あいつに…
汐月をあげる隙なんか、ない…」



熱いくちびるは下へと流れ、胸の頂きを強く吸った。



歯を当てて、噛みついて



これまで以上の執着を刻み込まれた。



痛みと快楽の狭間でおかしくなりそう。



「白…んっ、やめて…っ」


「汐月…汐月は渡さない…誰にも…
すべて、ぼくだけの…も、の」



その言葉を最後に、白の動きがピタリと止まった。



ひとりぶんの重さがのしかかってくる。



「…白?」



視線を向ければ、白は私の胸に顔をうずめながらすやすやと寝息を立てていた。



「し、ろ…?寝てるの?」



軽く肩を叩くも、ピクリともしない。



これは…爆睡というやつ?



暗がりにようやく慣れた目は、赤ん坊のように胸に縋りつくひとりの男を映した。



ほんとに寝てる…。


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