しづき


頬の温もりと、頭の痛みに目を覚ました。




「───?!」




これは…どういうことだろう。



汐月がぼくの頬に手を添えて、眠っている。



天使…いや、この世の何をかき集めたって敵わないほどの寝顔。



かわいい、かわいい、食べたい。



寝起きからぼくの本能が暴走しそうになる。



落ち着かないと、汐月は繊細なんだから。



とりあえず上体を起こすと、ぼくの頭からなにかが落ちてきた。



これは…タオル?



「うわ…」



裏面を見ると、血がベッタリと付着していた。



これなに?



────まさか



とっさに汐月を見た。



白いワンピースには
血が付いていた。



ひゅっと喉が詰まって全身が凍りつく。



「嘘、でしょ…」



まさか…ぼくが…?



考えるが先か。
汐月の体に腕が伸びていった。



どこか傷はないか。



出血している部分はないか。



くまなく探したけど、ぼくが付けたキスマーク以外、外傷は見当たらなかった。



「なに?どーゆーこと?」



汐月には怪我はない。
じゃーこの血はなんなの?


身に覚えのない状況に、首をひねる。



「まーいいや。汐月に怪我がないのはなによりだし。あとでお風呂に入らせないと…」



誰の血だか知らないけど、ぼくの汐月に付着するのなんて許さない。



あとで血の持ち主を調べて二度と表へ出られない体にしてやろう。



汐月に触れていいのはぼくだけだ。



「今は汐月寝てるし…起こさないでおくか」



かわいい顔して眠る汐月にそっと毛布を掛ける。



まったく…なにも掛けないなんて風邪ひくじゃん。



しかしかわいいな…



愛おしい汐月の頬をひと撫でして



さっぱりするため洗面所へ向かった。


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