しづき




「は?」




鏡に映った自分の姿に声をあげる。



ぼくは真っ黒なスーツを身にまとっていた。



こんなの覚えがなさすぎる。



そしてなにより…髪が真っ赤に染まっていた。



「は?は?なにこれ?」



意味不明の状態におもわず頭を抱える。



すると、手のひらがちょうど当たった額の部分がズキッと鋭く痛んだ。



「いっ…な、なに?」



前髪を持ち上げれば、なんてことだろう…



おでこがパックリと切れていた。



血は止まっているけど、見た目はかなりグロテスク。



「え、なに…」



もしかして、さっきの血って…ぼくの?



起き上がったときに落ちてきたタオルを思い返す。



うん。確実にあれはぼくの頭から落ちてきたな。



血まみれの…タオル。



そして隣には、血まみれの汐月。



考えて、ハッとする。



まさか汐月…なにかしらでこの怪我を負ったぼくを手当てしてくれた?



そのもしかしてに、心臓がドキンと鳴る。



そのとき───





「白っ!」





ぼくを呼ぶ大きな声が響いてきた。


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