しづき






「…ふむ」



すべて聞き終えて考える。



汐月のかわいらしい唇から紡がれる言葉は、
ぼくの記憶をはっきりとよみがえらせた。



「うん、思い出した」

「ほんとですか?」





ぼくは昨晩、汐月の元彼のもとへ行ったのだ。



その理由は
2日前に汐月のスマホに送られてきたメッセージ。




『──もう一度やり直したい。
2日後の夜、家行くから』




という内容だった。



ぼくは怒りに震えた。



神聖な汐月の心を弄んでおいて、まだやり直しがきくと思っているなんて。



どれだけ浅はかで愚かな男なんだ。



あいつはぼくより先に汐月の心を奪った。



ぼくより汐月の笑顔を見た。
甘い声を聞いた。



許せない、許せない。



嫉妬でおかしくなりそうだったぼくは
すぐさまスマホから元彼の連絡先を
削除した。



そして2日後、汐月の代わりにぼくが行くことにした。



本当は殺したってかまわないけど、それじゃ汐月に嫌われてしまうから。



話し合いで妥協してやろうと思ったのに。


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