しづき
『俺は、本気で汐月が好きなんだ』
なんて抜かしやがった。
プチンと頭の糸が切れたぼくは、もうまっしぐら。
汐月の元彼と取っ組み合いの乱闘になった。
倒れたぼくは、きっとそこらへんに落ちていたガラスにでも額を滑らせたんだろう。
怪我をした瞬間なんか覚えてなかった。
ただ怒りで目の前が真っ赤だった。
決着がつく頃にはどちらもフラフラ。
正直、覚えているのはここまでだ。
「ねぇ白…昨晩どうして出かけたんですか?なにをしてきたんですか?」
潤む瞳で見つめてくる汐月。
それはずるいよ。
ただでさえかわいいのに、さらに倍化したら抑えきれなくなる。
「私…怖かったんですから…
白が死んでしまうんじゃないかって」
「…ごめんね」
震える体を抱きしめる。
小さな手がぼくの服をぎゅって握って離れない。
うぅ…かわいい。
けど、何も言えないのが切ない。