しづき


「白、教えてください」


「…それは」


「教えてくれないと、嫌いになりますよ」


「うっ…」



胸に刺さる「嫌い」のひとこと。



ぼくはこの言葉に弱い。



嫌われるくらいなら…怒られるほーがマシ。



そう思ったぼくは、昨晩のことを正直に話した。




案の定、汐月はカンカンに怒った。

だけど最後にはお礼を言われた。




「ほんと、勝手なことをしてくれましたけど、あのクズ男をボコボコにしてくれてありがとうございます」


「え…」



予想外の反応に驚く。
最悪口すらきいてもらえなくなるかと思ったのに。



「私のトラウマを作ったひとりですから。
戦ってきてくれたのは…感謝してます」



そう言って、ぼくの額に触れた。



大きなガーゼが貼られた額に。


< 253 / 312 >

この作品をシェア

pagetop