しづき


「そーですね」



それだけ答えて、白の胸におでこを擦りつけた。



「とゆーことで汐月さん」


「なんでしょう」



「今晩、ぼくのものになってくれますか?」



唐突なお誘いに、ぴくりと反応してしまう。



「今晩…ですか」


「そ。ぼくと本当に繋がってくれますか?」


「……」


「汐月のこと抱くとは言ったけど、傷つけないって約束だもんね。嫌ならどーか抵抗してください」


「……」




「ぼくはそれでかまわないから」



おでこにくちびるを押し当てられる。



ふんわり、石けんの匂いがした。



傷だらけで孤独だった私の心は、この匂いと温もりにたくさん消毒されてきた。




もうどこも痛くないよ、白。



私は、包み込んでくる体を、はじめて自分から抱きしめ返した。



心の中で覚悟を決める。



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