しづき





その夜は一緒にお風呂に入った。



うしろから抱きしめられて、体をちょくちょく触られて。



私が抵抗すれば、抵抗した場所にキスをされる。



逆立つ私を甘さで押さえつけてくる白にはもう慣れた。



白に触れられていると



理不尽な罵詈雑言を浴びせてくるあの人たちの記憶が、遠い昔のように感じる。



白はあの人たちとまったく真逆の位置にいると思う。



たまにちょっと強引だけど

浴びせてくるのは甘い唇か優しい言葉。



トゲをいっさい感じさせないやわらかなもの。



ここに来て、むしろ私の方が白をたくさん傷つけた気がする。



大嫌いなんてしょっちゅう言ったし、愛の言葉は受け流した。



今はそうじゃないけど、心のこもった料理だって一口も食べることはなかった。



白なんか誘拐犯だし最低だし
気持ち悪いって思っていたのに。



もう完全に白旗。



白の愛の勝利だ。



だから私は思う。
白のものになりたいと。


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