しづき
「汐月…この痕はもう痛くない?」
白の親指が生々しい自傷痕を撫でた。
今までここに触れてこなかった白が、はじめて私に問いかけた瞬間だった。
「…気づいてたんですか」
「うん…最初から。
てゆーか自傷してるのも知ってたよ」
「そーですか…」
「痛かったね」
そのトーンはけっして私を憐れむようなものではなかった。
また初めてだ。
こんなこと言われたの、初めて。
「汐月は必死に闘ったんだね。
傷つけられた分やり返したっていーのに
それをせず、ひたすらに耐え続けた」
「……」
「汐月は強いね」
そっと、そっと
私の傷を言葉を手のひらで撫でていく。
まるで、大丈夫と言い聞かせるように。
「汐月は綺麗。傷痕すらも美しい」
「……」
「違うなんて言わせない。
汐月は誰よりも強くて美しいよ」