しづき
「動かないでね」
「はい」
白は真剣な顔をしてペンを走らせた。
画家の仕事をしている時はこんな感じなのかなって勝手に想像してみたり。
そして
もうこんな白は二度と見られないんだなって、切なくなったり。
「はい、できたよ」
数分後、渡された紙を受け取った。
「わぁ…すごい」
描かれていたのは
ふんわりとした線で紡がれた
笑顔の私だった。
胸が熱くなって、泣きそうになる。
「すごいでしょー。ぼく天才かもね
なんかすごいスラスラ描けた」
「うん、天才。天才だよ…
白ありがとう」
温もり溢れる絵は、まるで白の性格そのものを表しているようで。
こんなに優しい絵…見たことない。
「大切にしますね、ずっと」
ぎゅっと、心臓の上に添えた。