しづき





その夜



「はい、今晩はオムライスだよ」



綺麗な形のオムライスが、テーブルの上に置かれた。



私の大好きなオムライス。



そして、白が作ってくれた料理で、私がはじめて食べたもの。



「食べよっか」



そう言って、白は私の前に座った。



彼にもきちんとオムライスが用意されている。



どうしてここ最近、私の前で食事をとらなかったのか。



そんな疑問はもうどうでもよかった。



もしかしたら
食べるのすらままならない状態なのかもしれない。



そんな"もしかしたら"を
私はいつもどおり流してスプーンを持つ。



私のために一緒に食べてくれるのなら、楽しくしよう。



たとえそれが、フリだとしても。



一口、ほくほくのチキンライスを頬張った。



「おいしいですね」



笑いかけるわたしに

「そーだね」と白は笑う。



その手に持たれるスプーンは、まったく進んではいなかった。



また、泣きそうになる。



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