しづき






灯りの消えた真っ暗な部屋。



最後の夜。



私と白はベッドの中で手を繋いでいた。





「そういえば、明日は何時にここを出るんですか?」



シンとした空間に私の声が響く。
本当に、この部屋には音がしない。



「早朝の6時頃かな。なるべく人のいない時間に、あの河川敷へ送り届けるよ」


「わぁ…早いですね…。
起きられるかな」


「ぼくが起こすから安心して。
なにか軽く食べてから家を出よーね」



まるで遠足の前日みたいな会話。



今隣にいる人間と明日にはお別れだなんて実感が湧かない。



「なんか…神隠しにあった気分です」

「神隠し?ふふ、なんかいーねそれ」



くすくすと笑う白。



すぐ隣から腕が伸びてきて
「おいで」と抱きしめられる。


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