しづき






ほどよく揺れる車の中、スピーカーからは私の好きなアーティストの曲が流れている。




向かうはあの河川敷。

すべてが始まった場所。


そこで、すべてが終わる。






「ねー、汐月」



しんとしていた車内に、白が口火を切った。




「ぼくのこと、
ほんとーに何も聞かないんだね」


「……」


「なんか隠してるってゆーのは
もうとっくに気づいてるでしょ?」



私が気づいていることに、気付いている。
そんなトーンだった。




ええ、知ってます。


白の状態も。
これからどうなるのかも。




全部、全部、知っています。

だけど、私は言いません。




だって知ってるから。

白は隠し事を当てられるのが
ものすごく嫌だってこと。




だから言いません。

代わりに、最大限の愛をこめて言います。




「さぁ?なんの話しでしょーかね」




ふいと、窓の外に目をやった。



視界の隅で、白が笑った気がする。



それでいい。

白が笑ってくれるのなら、それで。




私はなにも言わない。


永遠のお別れなんて、そんなの
お互いが信じられないように。



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