しづき
「左手、出して」
「ちょっ、あ…」
出してと言うくせに、私が手を出す前に
掬い上げてしまう。
するりと
薬指にリングが嵌められた。
「これ…あのときの…」
「そう。怖くない?」
遠慮がちに訊く白に
「平気です」と答える。
元彼の影響で
トラウマだったペアリング。
あのときは怖くて仕方なかったけど
今はなにも怖くない。
気づけば白の薬指にも同じものが
嵌められていた。
「これで汐月はぼくのもの」
「……」
「骨の髄までぼくのだよ」
二本の腕がきつく私を抱きしめた。