しづき



私を包むのは石けんの匂い。

大好きな、匂い。




「汐月…愛してる」




確かめるように、焼き付けるように

白は私を抱きしめた。



やっぱり…白と普通に出会いたかった。

ぜったい、好きになってたから。



白は私をゆっくり離す。

見下ろす瞳は
いつもの愛おしげなまなざし。









「汐月、ぼくがいなくても、もうへーき?」



「……」




「死にたくなっても、ひとりで歩ける?」





私を信じて、そう訊く白。


そんな彼に

深く、深く、うなずいた。



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