しづき










ぼーっと

前まで死にたいなんて思いながら
歩いていた河川敷を進む。



その足取りはしっかりしていて
どことなく軽い。



夢から覚めたような気分だった。




「白」




その名前を呼んでも
もうあの甘ったるい声は返ってこない。



だけどそれでよかった。



私にはもう必要ない。



優しさも、温もりも

この腕に溢れるくらいもらった。



涙が出るのは気のせいだ。

私は強くなったんだから。



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