しづき



真夏の河川敷。



汐月と別れて、車へと乗り込んだ。


「……」


体が、ありえないくらい脱力した。


自分の手のひらを見つめる。


やわらかな汐月の髪を撫でた手のひら。



短かった1ヶ月。


ぼくはこの手で汐月に触れ続けた。



もちろん拒絶されたこともあったけど。
だけど、最後は汐月の隅々まで愛すことができた。


嬉しくて、それでいて切ない。



汐月…汐月……



「しづき…」



わかってる、汐月は確実に強くなった。


無感情な彼女はだんだんといろんな表情を見せてくれた。


自身でも確信するほど精神面は丈夫になったんだ。



わかってる…わかってるけど…



「汐月…」



君の強さは、優しさや弱さからくるものだから心配だ。


まわりの心無いやつらに傷つけられないだろうか。


心配で心配でたまらなくなる。


< 304 / 312 >

この作品をシェア

pagetop