しづき


汐月は「普通に出会えれば良かった」
そう言っていたね。


そんなのさ



「ぼくも、だよ」



誘拐なんかしないで、普通にアプローチして、君の隣にはぼくがいる。


そんな希望ある将来を見てみたかった。


だけど、無理なんだ。



だってこんなにひどい。


ぼくは、君のこと以外もうなにも思い出せないんだから。



自分自身がどうなっていて、いつ消えるのか。


そんなことすら分からない。



怖いに決まってるけど、それでも、最後まで生きてみようと思えたのは汐月のおかげなんだよ。


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