しづき



もう!全然ききわけない!




「出ていってくれないのなら、今後一切あなたと口ききませんからね!」




知らないんだから!こんなヘンタイ男!



私はぷいとそっぽを向いた。




すると、ほんのちょっとの沈黙が広がって。




「……わかった」




男がぽつりと言った。



その声はすごく悲しそうで、演技ではないことがなんとなく分かる。




「汐月と口きけないなんて、ぼく死んじゃう。だから、見るのガマンする…」




あからさまにシュンとした表情。



ベッドから腰を上げて、振り返りもせずに出ていってしまった。




………なんだろう。



あんなに落ち込まれちゃ、逆にこっちが悪いみたいな…



ほんのり胸が痛いのですが。


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