しづき
「さ、食べよーか」
私の目の前で、男が微笑みながら手を合わせる。
しるし、なんかをつけられたあとは
何事もなかったかのようにイスに座らせられた。
テーブルの上には、オシャレに盛り付けられたパンケーキと紅茶が並べられており、今朝嗅いだ甘いにおいの正体はこれだったのかと知った。
「……」
「汐月?食べないの?」
ただ並べられたものを見つめる私。
そんな私に、男は不思議そうにつぷやいた。
「…食欲が、なくて」
「え、大丈夫?体調でも悪い?」
「いや…そういうんじゃないんですが……」