しづき



「………」




なにも言わず、ひたすらにつうむいていれば




「……ま、そーだよね」




何かを感じ取ったみたいに、男は私の皿を片しはじめた。


丁寧にラップをして冷蔵庫へ運ぶ。



その背中は少し悲しそうだった。




──ツキン




また胸が痛い。




どうしても男は私を責めようとしないんだ。



急に泣き出しても、拗ねても
こうして、せっかく作ってもらった朝食を拒否しても。

男はなにも言ってこない。




私の短い人生の中で、なにをしても責められてばかりだったから。


この男のように、私の言動をさらに強いもので跳ね返すのではなく、ただ吸収する人は初めてだった。




慣れない。いちいち、胸が痛い。


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