しづき
すると
「はい」
下に落ちていた視界の中に、見慣れたパッケージが飛び込んできた。
──いちごミルクパン──
それは、私の好きなパンの銘柄だった。
はっと顔を上げれば、男が優しい笑を浮かべながら立っていた。
「これ…」
「汐月がいちばんよく食べていたパン。
念のため買いだめしておいたんだよね。
これなら食べられる?」
目の奥がじんとした。
男は私の考えをすべて見通したうえで、責めもせず尽くすことを選んだ。
「毒も薬も入ってないよ。
まぁぼくがそんなもの汐月の食べるものに入れるわけないんだけど、今は信じてもらうことすら難しそうだし。これなら安心して食べられるよね?」
そう言いながら、紅茶のカップと入れ替えに、レモンティーのペットボトルを置いてくれる。
「これもちゃんと市販のもの。当たり前だけどまだ開けてないから。心配なら確認してみてね」
いちごミルクパンと同様、私の好きな銘柄のパッケージ。