しづき
理解のできない献身に、不覚にも涙が出そうになる。
どうして…ここまで。
「ぼくを信じるのはゆっくりでいーからまずはなんか食べな。言ってくれれば好きなの買ってくるからね」
また優しく微笑み、私のイスに前に座る男。
怒らない、責めない。
理不尽に誘拐してきたけど
私を傷つけようとはしない。
監禁されているのに
包みこまれているような。
怖くてヘンタイで気持ち悪くて
それでも、優しい男。
目の前の人間が
まったく新しい世界そのものに思えた。