しづき






食後、歯磨きを済ませると
リビングでは男がガッツリと待っていた。



イスにも座らず、その場で仁王立ち。

なんだかその光景がちょっと滑稽で笑いそうになってしまった。




「なにしてるんですか」


「汐月をまってた」




男は長い足でそばに来ると、よしよしと意味もなく撫でてくる。





「あ、あの」


「ん?」




声をかけておいて、止まる。


そういえば私…この人の名前を知らない。




名前を呼ぼうと思ったけど、呼ぶ以前に分からないという問題が発覚した。

だから




「名前…なんていうんですか」


「え、」




おずおずと聞けば、なぜか目を丸くされた。



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