しづき
「汐月…すき」
愛おしげな吐息。声。
伸びてきた腕にぎゅうううと抱きしめられる。
抵抗しようとしても
私の思考を奪うのはやはり石けんの匂い。
否が応でも心が落ち着いてしまう。
「はぁ…汐月はいい匂いだね。ほんとかわいい。
ぼくだけの汐月…かわいい…すき。食べたい」
言葉の通り
耳をはむっと甘噛みされた。
唇だけの、とても優しい噛みつき。
「…ほんとに食べないでください」
「かわいくて我慢きかないんだもん。
ほんとは汐月のぜんぶ食べたいくらい」
「私のぜんぶを捧げるのは
私が好きになった人だけです」
「じゃーそいつ殺して汐月のこと閉じ込める。
汐月がぼくを好きになるまで永遠に、ずっと、一生」
「………」
うっとりした甘美な声にぞくりとする。
この人ならほんとにやりかねない危うさがある。
閉じ込めるだなんて言っているけど、今だって十分私を監禁していることを理解しているのだろうか?