しづき


残るのはお湯の揺らめく音と

それ以外の静寂。



──ごめんなさい、ごめんなさい!


──なにこいつキッモ。泣いてんじゃねーよ!


──ごめんなさい…ごめん、なさい…


──泣くことしか能ねーのかよタコ!もう俺らに近づくなよ、きったねーから。



脳裏に逡巡する、死にたくなるほどの記憶。



あの人たちはどんなに謝っても許してくれなかった。



泣いても頭を下げても。



私を汚い物として認識し、少し近づくだけで払い除けた。



思い出したくなんてないのに…



こんなタイミングでよみがえってくるなんて皮肉にもほどがある。



『…ごめんね、汐月』



───ザバンッ



私は、勢いよく立ち上がった。


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