しづき
いつのまにか、傷跡に爪を立てていた。
汚い、気持ち悪い。
あいつらのせいでできた傷なんて。
消えちゃえ
消えちゃえ
消えてしまえ
「…くっ…うぅ…」
立っていられなかった。
心が波のように不安定。
引っ掻いた部位からは血が出ていて、絵の具のようにお湯にただよっている。
不謹慎にも、それがなんだか無性に美しく見えて、おもむろにすくいあげようとすれば
『かわいーよ、汐月』
優しい声が、優しくよぎった。