しづき
「白…ごめんなさい」
「うん?」
鎖骨から唇を離し、私は静かに言った。
自分でもよくわかっていない「ごめんなさい」
なにも悪いことはしていない。
だけども、なぜか言いたくなった。
「とりあえずごめんなさい…。なにも聞かず、言葉だけ受け取って…ほしいです」
「ふふ、わかったよ」
曖昧な私に笑ってくれる優しい誘拐犯。
「それと…ありがとう」
「なーに?今度はお礼?」
白の指が私の髪をやわく梳く。
愛おしそうに上へ下へと伝う指。
優しくしてくれたこと
傷に触れなかったこと
不覚にも響いてしまったそれを、一から十まで言う気はないけど。
ありがとうだけは伝えるよ。