しづき
「まさか…汐月から噛み跡くれるなんてね」
目を細めて妖しく笑う白。
私だけを映す瞳は、すべてを呑み込んでしまいそうだった。
「噛まれてるとき、死ぬかと思った」
「あ…痛かった…ですか?」
「ううん。嬉しくて」
長い指が私の鎖骨を覆うガーゼをなぞる。
「あとでぼくにもガーゼ貼ってね。同じのを汐月の手で。そーすればおそろいだよ。ぼくらは傷すらおそろい」
「おそろい…?」
「そーだよ。汐月だけの傷なんてないよ。汐月の傷はぼくの傷だから。おそろい」
ガーゼの上に優しい唇が落とされる。
私はまた泣きそうになった。