しづき
「…やっ」
力いっぱい胸壁を押す。
けれど、押せば押すだけ私を閉じ込める腕の力は強くなり、余計に逃げられなくなってしまう。
「離してっ」
「油断したきみが悪いんだよ」
「やだっ…」
「逃げないでよ。やっと捕まえたんだから」
「なに言って…」
意図せず交わった視線。
男の瞳には、ただならぬ執着が燃えていた。
そしてやわらかく弓状に歪んで
「ようやく…ぼくのものになったね、しづき」
背筋が一瞬で凍りついた。