しづき
「ま、逃がさないけどね。汐月が外へ出て、ぼく以外のものになるのなら、いっそ殺しちゃったほうがマシ」
目尻が狂気に染まり、細められる瞳。
私だけを見て、私だけを映して
私だけを愛する瞳。
美しさの奥には、歪んだ想いだけが渦を巻いていた。
「ぼくはね、きみのためならなんだってできちゃうんだよ」
白は微笑み、私の頬にキスを落とした。
香るのは石けんの匂い。
それだけは、唯一無二の心が落ち着けるものなのに。
ドロドロに甘く淀んだ愛が私を支配している今
胸焼けがするくらい、甘ったるく感じてしまった。