しづき


「汐月…?」



深い場所へ落ちそうだった意識が、白の声によって引っ張られる。



私は慌てて隣を見た。



「し、ろ」


「なに考えてたの?他のやつのこと?」



その目は真っ黒だった。



───ゾク



「だめだよ、そんなの。ぼくのことだけ考えていないと、だめ」


「い…っ」



骨が軋むほど力を加えられた。



痛みが指先から全身へと広がる。



「汐月の頭の中にはぼくだけがいればいーの。他のやつなんていらない」


「いたい…白…っ」


「返事は?汐月。言わないとこの手折っちゃうよ?折れたらぼくになにされても抵抗できないね」


「しろ…っ」



痛みのせいで弁明おろか声すら出せない。



白が怖くて涙が滲んでくる。



だんだんと、隣の男が変容してきているのを、私はこのとき強く感じた。


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