しづき
「ほら汐月、いいの?折るよ?」
「やだ…やだっ」
「じゃあ分かったって言って」
逃げ場を与えない低い声。
私は振り絞るように
「分かった」と答えた。
すると
骨が軋むほど握られていた手のひらが、嘘のように優しくなった。
まるで壊れ物を包むような、ふんわりとした力加減。
ジンジンと残る余韻は、その変わり具合を引き立てていた。
「いーこだね、汐月。思考すらぼくのものだってこと、忘れないでね」
繋がれた指先に軽くキスをすると、白は満足そうに笑った。